耐熱性にすぐれ硬度を持つレアメタルであるタングステン。今回の記事では、タングステンにおける圧延加工のポイントをご説明します。タングステンにおける基礎知識も併せてご説明しますので、是非参考にしてください。
タングステンとは?
タングステンとは、融点が金属の中で最も高く、高密度であり金に匹敵する重量を持つ金属です。原子番号74の元素であり、元素記号は「W」となります。鉄やアルミなどの金属と比較し流通量が少ない金属ですが、優れた耐熱性や高い硬度により、様々な用途で使用されています。
タングステンの特徴と用途
タングステンの大きな特徴として、①高耐熱性②高硬度③高比重、が挙げられます。
高耐熱性
タングステンの融点は金属の中でも最も高い、約3400℃となります。鉄の融点が約1540℃、アルミの融点が約660℃となり、比較すると非常に高い融点を持つことが分かります。融点が高く耐熱性に優れ、また熱膨張率が低く超高温化での形状安定性も保持しており、白熱電球のフィラメント、電子レンジのマグネトロン等に使用されています。このようにタングステンは、高耐熱性が求められる超高温下で能力を発揮できる金属といえます。
高硬度
タングステンは、高硬度という特徴を持ちます。タングステン自体が高密度であり硬い素材ですが、炭素と結びつくことでさらに硬度が向上します。鉱物に対する硬さの指標であるモース硬度では、一般的に硬いと認識されているダイヤモンドに次ぐ「9」にランク分けされています(ダイヤモンドは「10」)。タングステンと炭素が結びついた加工物であるタングステンカーバイドは、高硬度という特徴を生かしドリル等の切削工具に使用されています。
高比重
タングステンは、高密度であり重い金属です。タングステンの密度は19.25g/cm3であり、鉄の7.874 g/cm³や銅の8.96 g/cm³と比較すると高比重であることが分かります。また、純金の密度が19.32g/cm3であり、金と同様に重い金属となります。高比重という性質を活かして、釣り用の重り等に使用されます。
鉛の代替品としてのタングステン
鉛は、鉄等の金属と比較すると高い密度(鉛の密度:11.3g/cm3)を誇る金属であり比較的安価に仕入れることができるため、釣りの重り等、重量が必要とされる製品に使用されてきました。また比較的高密度であることから放射線遮蔽能力が高く、X線を使用する検査機器や分析装置に放射線遮蔽用途で用いられてきました。
しかし、鉛は人体に有害な物質であるとともに地球環境にも悪影響を及ぼすため規制が進められており、その代替品として使用されているのがタングステンです。鉛と比較し高価ではありますが、金と同等の密度で鉛よりも高比重であり、さらに放射線遮蔽能力にも優れるため、今日ではタングステンの使用範囲が広がっています。
タングステンの圧延加工におけるポイント
前述のとおり、タングステンは様々な用途で使用されていますが、当社はそれらの素材となるタングステン鋼板を圧延する圧延機を製造しています。
タングステンは高硬度であり加工が難しく(変形しづらく)難加工材とされています。さらに、融点が高いため、粗圧延の際は、圧延温度を鉄等と比較し高温に設定する必要があり、条件設定が難しい金属であるといえます。
以下に、板厚10mm×板幅50mm×板長100mmのインゴットを板厚0.2mmに圧延する場合のプロセスをご説明します。
粗圧延
ロール径φ250mmの2段圧延機を用いて粗圧延します。板厚10mmのタングステン鋼板を、他の金属を圧延する場合と比較し高温の2000℃に加熱し、2mm程度まで熱間圧延します。
中間圧延
バックロール径φ200mm、ワークロール径φ90mmの4段圧延機を用いて中間圧延を行います。圧延機の左右にテーブルを設置し、材料温度100~200℃で1mm程度まで圧延します。
仕上げ圧延
バックロール径φ150mm、ワークロール径φ50の4段圧延機を用いて仕上げ圧延を行います。1mm程度のタングステン鋼板であれば常温で圧延が可能となります。圧延効率を上げる場合は、約100℃に温度を上げ熱間圧延するのも有効です。
圧延機の左右に巻出機、巻取機を設置し、ロールtoロールで張力を掛けて圧延加工を行います。仕上げ圧延により、板厚1mmのタングステン鋼板を0.2mmに圧延し、素材が完成します。
タングステンの圧延機は当社にお任せください
タングステンの基礎知識、タングステンの圧延加工におけるポイントについてご説明させて頂きました。
圧延機・ロールプレス.comを運営する大野ロールは、タングステンを対象とした圧延機の納入実績を数多く保有しています。タングステンは条件設定が難しい金属ですが、これまで培ってきたノウハウ・経験を活かし、圧延条件のご相談もお受けしています。また、タングステンの圧延加工を新たにご検討中で、既設機を用いて行いたいというご要望をお持ちの皆様、既設圧延機の改造も可能です。タングステンの圧延加工を行う圧延機の導入を検討中の皆様、お気軽に当社に御相談ください。